#くらす

40年住んで見える
何気ない、でもかけがえのない毎日

水谷暁さん

2022.10.04

#くらす #移住者 #Cエリア_栗田_由良

Cエリア_栗田_由良

栗田地区で40年以上過ごしてきたいわゆる地元の人、水谷さん。高齢者福祉施設で働く3児の父で、休日には趣味の家庭菜園や子どもを連れて山登りに行くなど栗田での暮らしを楽しまれています。また、仕事がきっかけで始めたSNSは10年間毎日投稿を続け、クスリと笑える内容で多くの人を楽しませています。
海と山がすぐそばにある地区での暮らしや子育てについてお話を伺いました。

植物が育つという楽しみ

――栗田地域で生まれ育ったと聞きました。

そうですね。大学で和歌山に住んだ以外はずっと栗田に住んでいます。今は高齢者福祉施設の事務をやっていますが、その前は伊根町の小学校で教員をしていました。その後、ちょっとモラトリアムというか、ぶらぶらし始めちゃって。友達と一緒に国内を放浪の旅に出たり、一人でオーストラリアにも行ったりしましたね。世界で住んでみたい町の1位がパースだったんで、行ってみようって。行ったことのない場所に行くワクワク感が好きなんです。その高速バスの中で妻に出会ったんですが、これはお酒が入らないと話せませんね(笑)。

オーストラリア旅行の一幕。コーラルベイにて(提供写真)

――いろんな経験をされたんですね。最近の生活を教えてください。

朝起きたら、家の観葉植物と畑の野菜に水をやります。それから、洗濯物干したり洗い物したり。妻も働いてるから、朝も忙しいし、家事は分担してます。ボーッとしてたら怒られる(笑)。

――家庭菜園をされてるんですね。

小さい畑なんですけど、家計の足しになればと思って10年ぐらい前から始めました。今はサツマイモやトマト、里芋、ピーマン、ナスを育ててます。畑の仕事はすごく楽しくて、収穫の時期になったら子どもたちと一緒に作業してます。収穫した野菜は家に持って帰るんですが、妻からは「作るだけ作って、それで終わりちゃうんやで」って最近は言われますね。「作るんは私やで」って(笑)。料理は妻がすごく上手なんで、あんまりしないんですが、料理もいつかはできるようになりたいなあ。

――観葉植物もお家の周りにいっぱいありますね。

観葉植物はコロナが始まってから、癒やしを求めてというか。毎日水やりをすると、成長を感じられて楽しいですね。今育てているのはグリーンネックレスっていう多肉植物なんですけど、コロコロとしてて可愛いでしょ。切ってうまく根付かせて増やしたいので、今頑張って育てているところです。

元は1株だったグリーンネックレス。今では10株を超えるように。

自然に囲まれた、ここでしかできない子育て

――お子さんのことをお伺いしてもいいですか。

男の子、3人兄弟で、家は毎日騒がしいです。でも、最近長男が大学に進学して家を出てしまったので、少し寂しいですね。うちの子どもたちは話し好きで、食卓でもよく学校の話とか部活の話をしてくれます。
子どもたちは3人いるけど、やっぱり同じじゃないね。一番心配かけさせられた上の子も、しっかり大学にも行って、今は語学を学んでます。真ん中はちょっと毛色が違って芸術肌で模写させたらピカイチ。一番下の中2はこの前からテニス部の部長に手を挙げて、今もすごく頑張ってますよ。

――子育ての面で、栗田の良いところはなんでしょう。

自然がそばにあるのは絶対良いと思います。ここでしかできない子育てがあります。畑で一緒に作業したり収穫したりするのも、やらせて良かったなというか、子どもとすると楽しいですよね。山もいっぱい登りましたし、海岸にもよく遊びに行きました。中学生になって、あんまり行ってくれなくなりましたけど(笑)。
でも、今でもたまに『山のてっぺんでカップヌードル食うか?』って聞くと『うん』って着いてきてくれたりしますよ。子どもたちが大きくなって子どもを持つようになったら、『お父さんいろんなとこ連れて行ってくれたなあ』って思ってくれたらいいなと思います。
動物とか昆虫とかにも触らせてきたんですが、なかなかうまくいかないもんで、大きくなったらみんな虫嫌いになっちゃって。俺はそんな風に育てた覚えはないぞ!って感じです。昔は平気でバケツいっぱいにカエルを集めたりしてたんですが。それが今の悩みです(笑)。

栗田を一望できるお気に入りスポット。(提供写真)

続けたからこそ得られるもの

――ご家族のこととか、日々の生活のことをFacebookで発信されてるんですよね。

そうですね。始めたきっかけは、福祉の魅力発信研修を受けたことでした。福祉の世界って、たとえば老人ホームが近くにあっても、行ったことないって人が多いですよね。なじみのない業界なんだと思います。昔よく言われたのは老人ホームは家から追い出された人が、死ぬまで暮らしているような、暗いイメージ。本当はそうじゃないんです。入所している人はすごく生き生きとしていて、そこで働いている人も仕事にやりがいを持って楽しく暮らしている。そういうことを発信していくために、SNSをやろうと。最初はSNSってなんやろなってところから始まって、とりあえず勉強するために、毎日1枚の写真と、それに関わる文章をあげていこうと決めた。それから10年間、毎日欠かさず投稿を続けてます。

――10年間毎日ですか!?それはすごいですね。

だんだんと見てくれる人や『いいね』をしてくれる人も増えてきて、最近は半分強迫観念みたいな感じで続けてます(笑)。でも、普段の何気ない日常を発信することで、宮津の紹介ができるのも楽しいですし、それを見てほっこりしてくれたり、楽しんでもらえたりするのはうれしいですし、クスッと笑ってもらえるような投稿を心がけています。
日々上げるのは、何でもないことばかりです。畑とかでなにか獲れたとか。子どもの態度が悪いとか。見てくれている人は高齢の方が多いみたいで、『子どもを育てていた時を思い出します』とかってメッセージを頂くこともあります。この前はうちの親戚が子猫を拾ったんで、フェイスブックで里親を募集したんです。そしたら友達になっている人が手を上げてくれて。そうやって助け合えるコミュニティもいいなと思ってます。

Facebook投稿。毎回300以上のリアクションがつく。

――長くこの地域に住んできて感じる魅力はありますか。

逆に長く住んでいると、地元の良さって分からないんですよ。でも、外の人に『海がそんなに近いなんていいなあ』とか『山って遠くにあるものじゃないの』とかって言われると、そういう自然が身近にあるのは大きな魅力なんじゃないかなと感じます。岩手に住んでいる妻のお母さんが泊まりに来てくれたとき、『ここはいつも鳥の声が聞こえるよね』って言われたのが印象に残ってます。全然気にしたことなかったんですが、意識してみると、確かに鳴き声が何種類も聞こえるんですよね。そう考えると、この地域には他にはない魅力がいっぱいあるんじゃないかなと思います。

――栗田は地域内の活動も熱心ですよね。

栗田はお祭りが盛んで、毎年10月の栗田祭は子どもから大人まで参加します。子どもの頃は練習がすごく楽しかったですね。青年のひとたちは、『抜き飛び』といって特別な太刀振りをするんですが、それをみんなで真似してました。かっこよかったなあ。逆に、大人になって祭りにかかわると、地域のコミュニケーションの場として祭りは大事だなと思いますね。地域の人とワイワイ話せる場所って意外と少ないんです。大人と子どもたちと関わったり、どこにだれが住んでいるっていうのが分かったりするのが、こういう地域では重要です。私も祭りの役をしているんですが、コロナでなかなか活動できないのがすごく寂しいですね。人と会えないことが続いて、心もだんだん距離ができてしまっているような気がします。

上司地区では、太刀振りと太鼓(2年に1度)が披露される(提供写真)

子どもたちにとっても、祭りはすごく大きい行事なんです。祭りってどこかナルシストになるんですよ。『自分かっこええ』みたいな。そうやって、みんなに見てもらう経験が、子どもの心にすごく残っているんです。祭りを経験するとみんな一皮むけて、大人になる。だからこそ、ないのはかわいそうだと思いますし、地域のことを知らずに大きくなっていくのは悲しいしさびしいなと感じています。

しっかりと向き合う、わたしたちのこれから

――地域と関わっていると、課題も見えてきます。

過疎化はどうしようもないですね。子どもの数も減ってますし、地域の活動もだんだんと小さくなってきている。ただ、過疎化が進んでいったとしても、みんなが暮らし続けられる地域でなくてはいけないと感じます。人がいなくなって、一人一人がしなくちゃいけないことも増えたんですが、なんとか地域を維持できるような工夫を考えたいです。

――お子さんが大きくなって、意識も変わりましたか。

そうですね、子育てにかかりっきりだったときとは、ステージが変わってきている感覚があります。もちろん子どもの将来も気になりますけど、自分もこれから好きなことをしていかなくちゃいけないし、かっこよく言うと「自己実現」かな(笑)。妻もそういう風に思ってるんじゃないかと感じています。どちらも、お父さん、お母さんで終わるのではなくて、これから人生のやりたいことを見つけていければいいなって思います。

――そういう考え方はとても素敵だと思います。

テレビも好きだし漫画も好きだし、観葉植物とか畑もやってたら、毎日時間が足りないんです(笑)。地域の活動だって、役を務めたりすると、地元の歴史や文化みたいなことにもすごく興味が湧いてきますね。そうやって地域への関わりみたいなことなのか、自然に関わる何かなのか、今は分かりませんけど、自己実現できる新しい夢みたいなものを、もう一度見つけていきたいです。

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